ここでは足がつるという症状はなぜ起きるのか。その仕組みや原因として考えられる病気について解説しています。
「足がつる」という症状は、「自分の意思とは無関係に、ふくらはぎの筋肉が急激に収縮・痙攣してしまった状態」のこと。
筋肉は通常脳からの指令を受けて伸び縮みするのですが、体内のナトリウムやカリウム、水分のバランスが崩れてしまったり、疲れていたりすると、ふとしたきっかけで筋肉が急激に縮んでしまうのです。
筋肉がある場所なら全身どこでも起きますが、こむら(ふくらはぎの筋肉のこと)で比較的良く起きるため、こむら返りとも呼ばれます。
単に筋肉が収縮しているだけといってしまえばそれまでですが、非常に強い痛みを伴い、場合によっては筋肉が断裂してしまうことがあるほど大変な症状です。
足がつること自体はさして珍しいことではないので、病気のサインだと考えるのが難しいという人もいるでしょう。
ですが、足がつる(こむら返り)のは、下肢静脈瘤の典型的な症状の一つでもあるのです。
もし、急に激しい運動をしたり、汗をかきすぎて熱中症になったりしていないのに良く足がつるのであれば、下肢静脈瘤の可能性があります。
下肢静脈瘤になると、足の血管の静脈弁が壊れて血液が逆流しうっ血します。
詳細なメカニズムはまだ明らかになっていませんが、ふくらはぎの血液が上手に循環しなくなることで、足がつりやすくなるのだろうと推測されています。
下肢静脈瘤になった人は足がつりやすいというのは、数々の調査結果から見ると事実といっても良いでしょう。
実際、431人の下肢静脈瘤患者に対して行ったとある調査では、「233例(54.1%)」の回答者が「こむら返りがある」と答えたことがわかっています。
さらに、下肢静脈瘤の治療後、233例中「205例(88%)」は「治療の結果こむら返りが改善した」と答えているのです。[注1]
下肢静脈瘤が原因で日常的なこむら返りに悩んでいる人は、適切な治療を受けることで、夜中突然足がつって痛みで飛び起きるといった心配もなくなるでしょう。
深刻な症状が出ておらず、足がつるくらいだったら特に問題ないだろうと体からの警告を見逃した結果、重症化し潰瘍ができてしまうこともあります。
下肢静脈瘤は放っておいても治らない病気なので、普段と違う症状や違和感を覚えた場合は、なるべく早く専門医のもとを訪ねましょう。
足がつったら絶対に下肢静脈瘤になっているというわけではありません。
基本的に、「体(足)が疲れている」か「運動による発汗や脱水症状でミネラルバランスが崩れている」と足がつります。
ここでは、一般的にどんなときに足がつるのか、原因を並べてみました。
足をつったとき、以上のいずれの項目にも心当たりがなく、むくみや疲労感もあるなら下肢静脈瘤を疑っても良いかもしれません。
下肢静脈瘤の症状は、ほとんどが「足がだるい・重い」「むくむ」「つる」のどれかです。足に冷えやしびれ、痛みなどを感じる場合、下肢静脈瘤以外の病気にかかっている可能性があります。
特に気をつけたいのが、足に痛みやしびれがあるケースです。詰まった静脈周辺で炎症が起きる血栓性静脈炎を併発すると、発生した炎症が原因で足に痛みが発生します。
また、歩くときや何もしていないときでも足に痛みを感じる場合は、脊柱管狭窄症や変形膝関節症、坐骨神経痛を疑いましょう。放っておくと神経の麻痺や歩けないほどの痛みに悪化してしまうこともあります。
足に強い冷えを感じる場合は、自律神経の失調や糖尿病による血行障害、閉塞性動脈硬化症などによって足の血流が著しく低下していることも考えられます。
このような症状が見られた場合、他の合併症が現れたり、手遅れになってしまうこともありますので、一刻も早く病院を受診することをおすすめします。
激しく運動したことによる筋肉疲労で足のつりは起こります。
特に普段は運動しない人が急に運動をすると筋肉の緊張が長時間続きます。
足の筋肉が縮むとアキレス腱が伸びる構造になっているのですが、これを制御する腱紡錘がうまく働かなくなって筋肉が必要以上に収縮してしまい足のつりにつながります。
脱水は激しい運動にも関わる部分ですが、その他に夏場に多量の汗をかいたり、下痢をするなどして体内の電解質のバランスが崩れてしまうと筋肉の痙攣が起こりやすくなります。
利尿薬を服用している場合も注意したほうがよいでしょう。
下肢静脈瘤による血流低下はすでに説明した通りですが、その他に急激な環境の変化による冷えや加齢、糖尿病などによる動脈硬化などで血流量が低下すると足のつりが起こりやすい状態になります。
脊柱管狭窄症や腎疾患など病気が関係している場合があるので、頻繁に足がつる場合は医師に相談することをおすすめします。
筋肉疲労や血流不足だけではなく、たくさん汗をかいて多くのミネラルが体外に流れ出てしまっている状態も足がつる原因のひとつです。カルシウムやマグネシウムなどのミネラルは筋肉の動きに深くかかわっており、体内のミネラルが低下すると筋肉の収縮を命令する神経の信号が乱れ、うまくコントロールできなくなります。そのため足の筋肉が硬直しやすくなり、痙攣を起こしてしまうのです。
たくさん汗をかくのは運動しているときだけとは限らず、例えば寝ている間もコップ1~2杯程度の汗をかくので、その分ミネラルは失われます。就寝中に突然足がつって苦しんだ経験はないでしょうか。その場合は水分不足で体内のミネラルバランスが乱れている可能性があります。特に気温が高い夏は汗をかきやすく、脱水症状を起こしやすいので注意が必要です。
筋肉疲労の回復に欠かせないアミノ酸とビタミン。特にビタミンB1は糖質からエネルギーをつくり出し、皮膚や粘膜の健康を保つ働きがありますが、注目の作用は乳酸をエネルギーに変える手助けをしてくれることです。
激しい運動を行なうとエネルギーの産生と同時に疲労物質の乳酸もつくられます。乳酸が体内に蓄積されると代謝を妨げて疲労の原因になりますが、ビタミンB1が不足していると乳酸の蓄積を防げず、足がつったり痙攣したりするのです。