下肢静脈瘤になって痛みを伴う場合に考えられる合併症やその他に足の痛みの原因となる病気について解説しています。
下肢静脈瘤は長時間の立ち仕事の後に痛みを感じることはあっても、一般的には強い痛みを起こす疾患ではありません。
しかし、痛みを感じる場合は血栓性静脈炎を発症している可能性があります。
血栓性静脈炎とは、膝やふくらはぎなど通常青色に見える、ややふくらんだ静脈部分に、血の固まり(血栓)ができてしまい、血管の内壁に炎症を起こすことを言います。
静脈が硬くなって赤く腫れ、場合によっては発熱も生じます。部分的に発症する場合もあれば、脚の静脈に沿って細長く腫れることもあります。
血栓性静脈炎は、何らかの治療のため静脈カテーテルや静脈注射を静脈内に長期間入れたままにするのが原因となることが多いです。
また、足の怪我が原因となったり、風邪を引いたなど別の病気がきっかけになったりして、炎症を起こすことも考えられます。[注1]
悪性腫瘍や腎炎など、他の病気や怪我に影響して起こる場合もある血栓性静脈炎なので、静脈瘤によって静脈内膜が拡張して静脈圧が上がることで、炎症が起きるというケースもあり得ます。[注2]
一般的には表在静脈の血栓症のことを血栓性静脈炎、深部静脈に起こるものを深部静脈血栓症と呼んでいます。
ほとんどの場合では自然寛解する疾患と考えられていますが、1ヶ月以上改善の見込みがなく治らなければ、同じ箇所に何度も血栓性静脈炎と見られるケースもありますので、医師の診察を受けることが賢明でしょう。
足に痛みを感じる血管の病気としては、下肢静脈瘤の合併症で起きる血栓性静脈炎以外に以下のようなものがあります。
歩くと腿やふくらはぎが痛いという場合は閉塞性動脈硬化症になっている可能性があります。
簡単に言うと足の血管に生じる動脈硬化のことで、血管が狭くなったり詰まったりします。
軽い場合は足に冷感や痛みが生じるだけですが、放っておいて重症化してしまうと、脚に潰瘍ができて壊死してしまい、足の切断を余儀なくされることもあり得ます[注3]
足がしびれる程度の症状から、歩くと痛くなる、何もしていなくても痛くなる、というふうに症状が悪化していきます。こうした症状があれば、早めに医師による検査を受けることが必要です。
男性の場合、閉塞性動脈硬化が原因で、勃起障害が生じることもあります。
診察では、足のくるぶし付近の欠陥や足背の欠陥が触れるかどうかの触診が行なわれます。
そして血圧を測定するABI検査により、下肢の血流もチェックし、もし閉塞性動脈硬化症の疑いがあるとされれば、血管エコーや下肢MRIなどでより精密に検査することになるでしょう。
下肢閉塞性動脈硬化症である場合、血管の動脈硬化が原因です。
こうした血管病は足だけに生じることは稀で、心臓の血管にも影響が出ていることがあります。
特に生活習慣が原因となって発症している場合はその可能性が高いため、足だけではなく全身の欠陥をチェックしておくことが大切です。
閉塞性動脈硬化症は徐々に進行していきますが、急に下肢動脈が詰まってしまう病気が急性動脈閉塞症です。
心臓にできた血栓が下肢動脈に流れ詰まるケースが多く、急に足の痛みが生じる他、脱力、麻痺、色調変化などの症状が出ます。
緊急で血栓を取り除く手術を行う必要があるため、できるだけ早めの受診が望まれます。
一般的には急性動脈閉塞症が発症してから6時間以内に処置しなければ、下肢切断に至ったり、麻痺など後遺症が残ったりします。
感覚障害や運動障害があると感じたら、すぐに病院に向かうことが必要です。[注4]
この他に、血管とは関係なく足に痛みを生じさせる病気としては坐骨神経痛、腰部脊椎管狭窄症、強直性脊椎炎、腰椎椎間板ヘルニアなどがあります。
足そのものに何も変化がないように思えるものの、なぜか痛みが生じるという場合は、腰や背中部分に何か原因があるとも考えられます。
足の痛みは何らかの原因で下肢の神経を圧迫していたり、血栓が静脈や動脈に詰まり血流不全を起こす場合もあります。
下肢静脈瘤は深刻な病気が隠れている可能性もありますので、違和感や痛みを感じたら、すぐに病院に向かうことをおすすめします。