日本全国で年間20万人の患者さんがいるといわれている下肢静脈瘤。その数字の裏で、まだ症状に現れていないがその危険性がある「下肢静脈瘤予備軍」が多数存在しています。
ここでは、自分が下肢静脈瘤予備軍なのではと不安に思っている方に向けて、どんな人がなりやすいのか、予備軍かどうかを見分ける方法、予備軍から脱却するための対策などをまとめています。
数百万人はちょっと大げさな感じもしますが、2015年にテルモ株式会社が実施したインターネットアンケート調査[注1]で、30~60代男女の8割以上が「足に何らかの違和感を感じる」と回答しており、足のむくみ自体はもはや現代病といっても過言ではないかもしれません。
下肢静脈瘤の予備軍と考えられる方は、日常生活で脚に負担がかかりやすい、血管が老化しているなどの要因により、下肢静脈瘤の症状を引き起こしやすい状態。早めに対策しておかないと、治療が必要になるケースもあるため要注意です。
下肢静脈瘤には様々な症状がありますが、比較的ゆっくり進行する病気であり、見た目に現れない、いわゆる自覚症状がないという場合もしばしば見受けられます。
そこで、予備軍かどうか見分ける上で、下記のような初期症状があるか確認してください。
単なる疲労と思われがちですが、放っておくとどんどん進行して下肢静脈瘤を引き起こす可能性があります。
歩いているときや寝ているときに足がつる場合、血液の循環が悪くなっているかもしれません。
静脈瘤が発生すると血液がたまって周辺に湿疹ができたり、それに伴ってかゆみが出てきます。
毛細血管が老化している状態です。痛みなどはないですが、すでに軽度の下肢静脈瘤といえます。
まず下肢静脈瘤になりやすい人がどんな人かというと「女性」「肥満」「便秘がち」「出産歴がある」「立ち仕事をしている」「家族に下肢静脈瘤歴がある」などが挙げられます。
男女比でいうと1:4の割合で女性が多く、年齢については40代以上の方に多いとされています。
さらに肥満や便秘、出産歴、立ち仕事、遺伝といった要因がいくつか当てはまっている方は、下肢静脈瘤予備軍の可能性があります。
性別・年齢・遺伝といった要因はもはやどうすることもできませんが、「立ち仕事をしている」という毎日の仕事が起因している可能性もあります。
立っている姿勢が長時間続く職業といえば、調理師・美容師・看護師・教員などが考えられます。
テルモのインターネットアンケート調査[注1]によると、「足に何らかの違和感を感じている」という質問に83.9%が「よく感じる」「たまに感じる」と答え、さらにその中の82.6%が「立ち仕事2時間未満」、87.7%が「立ち仕事2時間以上」だったそうです。
まだ症状に現れていないがその危険性があることを下肢静脈瘤予備軍といいますが、症状こそ現れにくいがすでに下肢静脈瘤が進行していることを「隠れ下肢静脈瘤」といいます。
なぜ症状が現れにくいかというと、通常は足の皮膚近くで起こる静脈瘤が筋肉の内側などの血管で起こっており、コブにならないためです。
こうなると気づかないうちに進行していき、エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)の主因とされる「深部静脈血栓症」を引き起こす可能性があります。
隠れ下肢静脈瘤は、足にむくみを感じている20~40代女性の7人に1人にその可能性があるともいわれており、放っておくと慢性化してしまう危険な状態なのです。
筋肉の内側などの血管で静脈瘤が起こる隠れ下肢静脈瘤ですが、全く症状がないわけではありません。
そこで、下記のような症状がないかチェックしてみましょう。この中から二つ以上当てはまる症状があった場合、隠れ下肢静脈瘤を疑った方がよいかもしれません。
下肢静脈瘤予備軍であることが疑われる場合、早めに対策する必要があります。
まずは食生活の改善や無理のないレベルで運動するなど、簡単にできることからはじめましょう。
味の濃い食べ物は塩分が高く、血圧が上がって血管にダメージを与え、下肢静脈瘤の一因になることも少なくありません。
そこで、外食が多い方であればできるだけ自炊に切り替え、野菜・大豆食品・魚など、血圧や血糖値を下げる効果のある食べ物を摂るよう心がけましょう。
例えば立ち仕事をしている方であれば、1~2時間に1回程度で結構ですので、足を椅子に乗せるなどして足を横向きにしたり、足の指を開いたり閉じたりを繰り返すなどしてみてください。
また、静脈が拡張するのを防ぐ弾性ストッキングの着用もむくみを軽減できるのでおすすめです。
[注1]テルモ株式会社|プレリリース(https://www.terumo.co.jp/pressrelease/data/2015/0910/83.pdf)
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