ここでは下肢静脈瘤の合併症で死亡の可能性がある肺動脈血栓症の症状や治療方法について解説しています。
肺動脈血栓症とは、下肢の静脈にできた血栓が剥がれて心臓の方へ流れていき、その先の肺動脈を塞いでしまう病気のことで、肺動脈塞栓症(肺塞栓)と呼ばれることもあります。
下肢静脈瘤になったら危ないのでは?と思われるかもしれませんが、肺動脈血栓症につながりやすいのは深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)の方です。
一般的に下肢静脈瘤とは皮膚のすぐ下にある静脈(表在静脈)の病気で、血栓も浅いところにできる(血栓性静脈炎)ため下肢静脈瘤だからといって肺動脈血栓症になりやすいわけではありません。
ただ、ごく稀なケースとして大伏在静脈にできた血栓が大腿静脈本管へ流れて増大し、深部静脈血栓症になってしまう可能性はあります。
肺動脈血栓症になると肺がきちんと機能しなくなります。呼吸をしても血中に酸素が取り込まれなくなるため急に息苦しくなったり、重症の場合には心拍も呼吸も停止して死亡する危険もあります。
大変怖い病気と言えますが、下肢静脈瘤から肺動脈塞栓症を引き起こす深部静脈血栓症になる確率は極めて低いため、それほど神経質に考える必要はありません。
急性の肺動脈血栓症の死亡率は診断がつけば約8%ですが、診断がつかないと30%と言われています。
特徴的な症状がないため、診断が難しい病気の一つですが胸部X線や心電図、肺動脈造影CTなどの検査を行って確認することになります。
しかし肺動脈血栓症は突然起こることが多く、一刻も早く治療を開始しないと命にかかわることもあるため、この病気が疑われ検査する時間的余裕がない場合は先に治療を行う場合があります。
治療は血液を固まりにくくする抗凝固療法や、肺動脈をつまらせた血栓を溶かす薬物を用いる方法が基本となります。
手術はまだ一般的ではありませんが、慢性の肺動脈血栓症の場合は薬で溶かすのが難しいほど血栓が固くなっているため、カテーテルを用いて血栓を取り除くこともあります。
肺動脈血栓症は早期治療が求められますので、疑わしい場合は救急車を呼ぶなどして循環器科のある病院ですぐに診てもらうことが必要です。
-->