ここでは、下肢静脈瘤の症状緩和に用いられる漢方のひとつ、八味地黄丸(はちみじおうがん)について詳しくご紹介しています。
漢方でいう「腎(じん)」とは腎臓だけでなく、副腎、膀胱、生殖器を含めた機能総称をいいます。「腎(じん)」は先天とも呼ばれており、父母から生まれながらに受け継いだ生命力を意味し、ヒトの成長、発育、生殖におけるエネルギーの源となります。「腎(じん)」の機能が衰えることを「腎虚(じんきょ)」といい、八味地黄丸はこの「腎虚(じんきょ)」を改善させるために処方されます。
人間の体は若いほど体温が高く水分を抱え込んでいますが、年齢を重ねるにつれて体温は低くなり、保湿力が下がってうるおいも失われていきます。
さらに加齢によって腎機能も徐々に低下していき、頻尿や残尿感、軽い尿もれ、寝ているときに何度もトイレに行きたくなるといった尿に関するトラブルが起こるようになります。
八味地黄丸には、冷えた体を温めたり、低下した体の機能を回復させる働きが期待できます。
さらに「腎気丸(じんきがん)」とも呼ばれるように、漢方医学における内分泌系や免疫機能などの機能低下によって起こる症状「腎虚(じんきょ)」に対して広く用いられており、尿トラブルに悩む高齢の方に多く処方される漢方です。
また、上記以外にも足腰の痛みやしびれ、乾燥肌による痒みや湿疹、糖尿病や前立腺肥大症などに対しても処方されることがあります。
地黄丸と名のつく漢方はいくつかあります。
八味地黄丸から「桂皮(けいひ)」「附子(ぶし)」という二種類の生薬を抜いたものが「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」といい、通称「六味丸」ともいいます。
その六味丸に目に良いとされる「枸杞子(くこし)」「菊花(きくか)」の二種類の生薬を加えたものを「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」といい、腎機能をサポートしながら、目の充血や視力低下を改善する目を養う漢方です。
八味地黄丸は主に漢方における「腎(腎臓・副腎・膀胱・生殖器)」に働きかける漢方ですが、血行障害を改善して血流を良くしたり、体温を高めて新陳代謝を促すことで下肢静脈瘤の症状であるむくみを緩和するといった効果が期待できます。
中高年に多く見られる、老化による目のかすみや視力低下にも八味地黄丸は処方されます。漢方の考え方において、かすみ目は体の栄養素である「血」が不足した「血虚」の状態であるとされています。八味地黄丸は血行の改善に働き、不足した血を補う効果が期待できるため、かすみ目に有効となるのです。
その他の効果として、疲労や倦怠感の改善などが挙げられます。
白髪は加齢以外にも様々な要因がありますが、老化によって腎機能が弱まる「腎虚(じんきょ)」もまた、女性の白髪に影響があるといわれています。
八味地黄丸の服用によって体質の改善をはかることで、疾病を原因とする場合を除き、黒髪を生やすことに寄与する可能性があります。
八味地黄丸には、水分の循環を助ける「茯苓(ぶくりょう)」「沢瀉(たくしゃ)」、血行障害を改善する「牡丹皮(ぼたんぴ)」などの生薬が配合されています。
水分の循環を助ける茯苓と沢瀉が水分過多の状態改善をサポートし、牡丹皮が血行を改善することで末端までうまく血液や水分が循環するように。そのため、むくみの上昇を緩和することにつながると考えられます。
八味地黄丸には重い副作用はありませんが、人によって服用後に胃の不快感を感じたり、吐き気や腹痛・下痢、食欲不振を起こす可能性があります。
それ以外にも動悸やのぼせ、舌の痺れ、発疹やかゆみといった症状がでることもあるようです。
なお、体をあたためる効果があることから、体力があり新陳代謝が活発な方には不向きな漢方といえます。
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