こちらでは下肢静脈瘤の症状緩和に用いられる漢方のひとつ、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)について詳しくご紹介していきます。
産婦人科の三代漢方薬の一つとして、血行を良くして体を温め、貧血症状を改善する効果が期待できる漢方薬です。一般的に足の冷えや生理不順などに悩む女性に使用されることが多い漢方です。
漢方では、血液は「血(けつ)」と呼ばれ、全身をめぐって体に栄養を与えるものとして考えられています。生理は、約28日の間に「気」(目には見えない生命エネルギー)を使って、全身から「血(けつ)」を集めることで起こるとされています。生理が正常に起こるためには、「血(けつ)」が正常に体を流れていること、「血(けつ)」の量が十分にあること、生命エネルギーである「気」の流れが滞っていないことが必要と考えられています。
「血(けつ)」の流れが正常でない場合、栄養素や熱が体の隅々まで行き渡らず、冷えや生理不順を引き起こす原因になります。また漢方では、体をめぐる「水」の流れが滞ることよってもむくみや冷え、めまいなどが生じるとされています。
当帰芍薬散は、「血(けつ)」と「水」の流れを良くすることで、冷え性や貧血、生理不順などを改善させる漢方薬とされています。
当帰芍薬散は「女性の聖薬」ともいわれており、生理不順をはじめとする女性特有のさまざまな症状に効果があるとされています。漢時代の「金匱要略」という古典書にも婦人難病で適応と紹介されており、古くから女性に使用されてきた漢方薬です。
当帰芍薬散は血のめぐりを良くして体を温め、体内の余分な水分を取り除く働きがあります。そのため、体力虚弱、疲労などにより足腰が冷えやすいことからくる、貧血・倦怠感・更年期障害(頭痛、めまい、肩こりなど)・生理不順・不妊症・動悸・慢性腎炎・などの改善効果が期待できます。
また立ちくらみ、耳鳴り、しもやけ、むくみなどの症状にも有効とされています。全身に大切な栄養素を供給し、血行を良くすると同時に水分代謝を整え余分な水分を体から取り除くため、下肢静脈瘤の予防にも効果的です。
当帰芍薬散は「当帰(トウキ)」「川きゅう(センキュウ)」、「芍薬(シャクヤク)」、「茯苓(ブクリョウ)」、「蒼朮(ソウジュツ)」、「沢瀉(タクシャ)」の成分が含まれます。
当帰と川きゅうには、血行を促進して貧血症状を改善して、体を温める効果があります。 芍薬は生理痛や肩こり、腰痛などの痛みを緩和させる生薬です。
蒼朮と沢瀉、茯苓は利尿薬として用いられ、体から余分な水分を取り除き、むくみ予防の効果が期待できます。
当帰芍薬散には、重い副作用はありませんが人によっては服薬後に胃の不快感や、食欲がなくなるといった症状がみられるかもしれません。また、下痢や吐き気、発疹、発赤、かゆみ、倦怠感といった症状が出ることもあります。
肝機能に異常が見られ、血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)が上昇することもあります。
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